会長よりご挨拶

 
ゆらぎの時代のなかで
 

 2022年4月より、舞踊学会の第22期の活動が始まりました。第21期では、2019年に第71回舞踊学会大会を専修大学で通常の対面形式により開催しましたが、その後新型コロナウィルス感染症の影響で2020年と2021年の定例研究会は残念ながら中止となりました。研究発表の場がなくなるという危機的な状況を回避するために、2020年(第72回大会)は岡山大学、2021年(第73回舞大会)は同志社大学を主管とし、オンラインによる開催を行いました。このような危機的情勢の中で舞踊学会として何ができるか、その果たす役割は何かを突きつけられたように感じていました。

 舞踊学会は、1975年12月に創設され、同時に発起人総会が行われました。1976年に学会誌である『舞踊學』が創刊。それ以降、日本における舞踊学の発展に寄与するため時流に合わせたシンポジウムやワークショップを行って参りました。さらに、2011年11月に、会員の皆様に有益な情報をお届けすることを目的としたニューズレターを創刊しました。

 これまでの通常の舞踊学会の営みを思うと、新型コロナウィルス感染症の収束も見えず、グローバル化への希求も崩れていく今、舞踊学会はコロナ禍を超えてどのように時代を切り拓いてゆくのか、我々に課せられている課題は多く、舞踊学が社会にどのように貢献できるのかを真剣に考え、研究や実践を積み重ねていく必要があります。コロナ禍前と同じ価値観ではない社会において、身体表現である舞踊という存在の確かさを確認できるよう、会員の皆様とともに、今こそ舞踊の持つ身体性や感性の重要性を問いかけてゆくべきであると強く思います。

 「学」の対象としての舞踊について、舞踊学会名誉会長である松本千代栄先生は、「舞踊は、地球上の歴史(時間)と地域(空間)の中に生成・発展と衰退、さらに新たな生誕を繰り返し、耐えることなく継続してきた」と述べています。舞踊学としての研究が音楽学や演劇学よりずっと遅くに始まったことを考えますと、我々はまだまだ舞踊学が発展途上にあることを認識して研究と実践を進めていかなければなりません。

 幸いにも、舞踊学会には、哲学、美学、演劇学、民俗学などを専門とする研究者が数多く存在します。歴史、地域、舞踊のジャンルを超えて、研究と実践を交流することのできる舞踊学会を大いに研究に活かして頂き、未来への希望をもたらすような研究が生み出されることを期待します。研究を模索する際に、新しいものばかりに目を向けるのではなく、これまで自身で醸成し培ってきたものの中に未来に向けた研究の芽があることを忘れてはならないでしょう。

 舞踊を多面的に捉え、いろいろなアプローチで研究しようとする会員の皆様にとって、意義のある学会でありますよう、また舞踊教育、舞踊芸術の発展に貢献できますよう、今後も精力的に活動したく存じます。皆様のご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
 

2022年4月吉日  舞踊学会会長 猪崎 弥生