会長よりご挨拶

 
舞踊学の拡がりと深まりを目指して
 

 2018年12月、お茶の水女子大学で開催されました舞踊学会大会は第70回を数えることになり、多くの会員による熱気あふれる議論がなされ、充実した時間を皆様とともに共有することができました。

 舞踊学会は、1975年12月に創設され、同時に発起人総会が行われました。1976年より大会を年2回開催し、1976年に学会誌である『舞踊學』が創刊。それ以降、支えてくださってきた多くの会員の皆様とともに舞踊学会は順調に歩みを進め、2002年には研究の活性化を目指した定例研究会を始めました。定例研究会の存在が増したこともあり、2003年には大会を年1回と定め、日本における舞踊学の発展に寄与するため時流に合わせたシンポジウムやワークショップを行って参りました。

 これまでの舞踊学会の歩みを振り返りますと、多くの会員の方々の舞踊学に対する情熱とご努力によりなされた活動が、今の我々の研究や実践へとつながっていると思います。改めて、これまで、また現在も舞踊学会を支えてくださっている方々に心よりお礼申し上げます。

 「学」の対象としての舞踊について、松本千代栄先生は、「舞踊は、地球上の歴史(時間)と地域(空間)の中に生成・発展と衰退、さらに新たな生誕を繰り返し、絶えることなく継続してきた」と述べています。舞踊学という学問への探究は、ウィスコンシン大学において、Margaret N. H’Doubler(マーガレット・ドゥブラー)氏によって作られたダンスカリキュラム、ダンス専攻のコースから始まったと言えます。日本では松本千代栄先生によって1963年東京教育大学(現筑波大学)に舞踊学講座が設置されたことにより、舞踊学への大きな一歩が踏み出されました。その後、お茶の水女子大学等において、博士の学位(舞踊学)が出せるところに至っています。 このように、学としての研究が音楽学や演劇学よりずっと遅くに始まったことを考えますと、我々はまだまだ舞踊学が発展途上にあることを認識して研究と実践を進めていかなければなりません。

 幸いにも、舞踊学会には、哲学、美学、演劇学、民俗学などを専門とする研究者が数多く存在します。歴史、地域、舞踊のジャンルを超えて、研究と実践を交流することのできる舞踊学会を大いに研究に活かして頂ければと思います。また、若手の研究者には、定例研究会で発表をすることによって多くの先達からご指摘やご意見を賜り、自身の研究の筋道を明確にして論文を投稿して頂きたいです。

 舞踊を多面的に捉え、いろいろなアプローチで研究しようとする会員の皆様にとって、意義のある学会でありますよう、また舞踊教育、舞踊芸術の発展に貢献できますよう、今後も精力的に活動したく存じます。皆様のご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
 

2019年4月吉日  舞踊学会会長 猪崎 弥生